中古住宅の売却時にホームインスペクションは必要なのか?

中古住宅の売却時にホームインスペクションは必要なのか?
不動産売却
中古住宅の売却取引時に「ホームインスペクションの説明と希望があれば業者の斡旋」という一文が宅建業法上で義務化されたのは2018年4月の改正のときです。
元々は2013年にホームインスペクションのガイドラインが国土交通省によって定められましたが、2022年現在において売主、買主双方においてホームインスペクションを積極的に行う方はまだまだ浸透しきれていない状態です。
人々が住宅を求めるようになった高度成長期時代から、日本人は「新築志向」が強いとされており、実際、中古住宅市場の取引数は新築取引よりも低迷期が続いていました。
しかし、ここ数年、中古住宅の取引数が新築住宅を上回っており、また国による既存住宅を対象とした補助金や助成金によって、既存住宅の価値が転換期にあると感じています。
そんな中古住宅市場ですが、やはり気になることは室内の設備、構造上の問題など、見えない箇所がどうなっているのかという問題でしょう。
売買契約後、トラブルになることを防ぐためにも、本記事では中古住宅を売却する予定の売主へ向けてホームインスペクションが持つ意味や、安心できる売買契約を締結できる要素になることを解説していきます。

1:ホームインスペクションは必要なのか?

本題に入る前に、ホームインスペクションの依頼方法について説明します。
ホームインスペクションを依頼する場合、2種類の方法で診断してもらうことができます。
1つは当該物件を仲介している不動産会社からの斡旋業者、もう1つは民間のホームインスペクション業者です。
2つのホームインスペクション業者の違いは、「国土交通省の定めた講習を修了しているか」の有無になります。
では、ホームインスペクションは中古住宅を売却する際、診断するべきなのでしょうか。
結論から伝えると、「インスペクションを行った方が良い」と考えます。
では、なぜこのような結論なのかを解説しましょう。


1−1:現状の把握ができる
売買契約には、契約不適合責任という、買主保護の制度が設けられています。
契約不適合責任とは、購入した目的物が契約内容と異なる場合、売主が責任を負うという内容になります。
具体的な売主が負うべき負担は、修繕の費用や補償の負担、さらに買主より損害賠償請求をうける可能性もあります。
この負担の回避方法は、「契約書上に記載する」に尽きるでしょう。
しかし、現在の住宅の状況を把握しなければ、契約書に記載することもできません。
そこでホームインスペクションを行うことで、建物全体の調査をし、売主買主双方が現状を把握することができるのです。
双方が理解の上、売買契約を取り交わし、契約書に記載があれば、売主側も契約不適合責任を負うことはありません。

1−2:買主が安心感を抱ける
マンションは管理組合と管理会社の間で長期に渡る修繕計画を立てていることから、どちらかというと、ホームインスペクションは中古戸建を軸に考えられた制度になります。
特に築年数の経過している戸建の場合、雨漏りやシロアリによる被害は放っておくと建物自体が倒壊してしまう危険もあります。
そこで、ホームインスペクションによって建物の内部を調査してもらうことで、買主側も劣化箇所を把握することができ、事前に知ることができるのは何よりも安心に繋がる要素になります。

1−3:瑕疵担保保険に加入できる
ホームインスペクションの調査結果から、瑕疵担保保険に加入することができます。
万が一、物件売却後、瑕疵が見つかり修繕が必要になった場合、保険で対応することができるのです。
瑕疵担保保険に加入できる条件として下記の2つがあります。

1:新耐震基準に適合した建物であること
2:インスペクションを1年以内に行い合格した建物であること

2:ホームインスペクションは売主・買主どちらが負担するべきか

中古住宅売却時のホームインスペクションの費用負担は、売主買主どちらが負担するべきなのかという明確な定義は決まっていません。
背景には、ホームインスペクション実施の中古住宅が少ないということも理由として挙げられます。
明確なルールが決まっていない以上、双方と不動産会社を含めた話し合いでホームインスペクションの実施や費用負担を決める必要があります。
しかし、買主側が実施する際は、契約締結前のため売主所有の物件だということ、ホームインスペクションの結果次第では価格交渉やキャンセルの可能性も示唆されるため、事前に売主への許可が必要になります。

2−1:不動産会社が負担する場合もある
売り出し物件によってホームインスペクション費用は不動産会社が負担する場合も中にはあります。
不動産会社としては、ホームインスペクションを実施することで安心な取引ができ、結果的に不動産会社の成約にも繋がるためとされています。
売主、買主どちらも費用を負担する必要がない物件もあるため、媒介契約を締結している不動産会社に確認することをおすすめします。

3:ホームインスペクションの費用

費用負担の決まりがないため、売主側がホームインスペクションの費用を負担する場合も可能性としてあるということに繋がります。
それには費用負担の相場を知りたいところです。
では3章ではホームインスペクションの費用相場を紹介します。

 
住宅の種類 費用相場
一戸建て 5万〜6万
マンション 5万前後

ホームインスペクションでは、目視で次の箇所を点検していきます。
1:建物の傾き
2:雨漏りの跡
3:屋根、外壁、内壁の亀裂など
4:シロアリの形跡
5:柱、はり、床、小屋の骨組みの異常

主に上記の項目を目視で確認し、問題が発生した箇所はより念入りに調査をしていきます。
現在のホームインスペクターは目視で実施している方がほとんどですが、業者によっては計測装置を使用している場合もあります。
このあたりは依頼する業者によって計測方法が異なることを理解しておきましょう。

4:ホームインスペクションの行う時期

費用負担と同様に、ホームインスペクションの実施時期も正確に定まっているわけではありません。
したがって、本記事では、売却時に推奨するタイミングを紹介していきます。
売主側が負担するなら、ホームインスペクションを実施するタイミングは早い時期に越したことはありません。
不動産会社と媒介契約を締結するタイミングや、もっと遡り売り出すと決めた段階でも良いのです。
ホームインスペクションの結果が全て確認されている状態で募集に出されているなら、買主も欠陥部分を把握できることは安心要素に繋がるでしょう。

4−1:もし買主負担でホームインスペクションを希望したら
売主がホームインスペクションを実施しているにも関わらず、買主によってはダブルチェックをしたい意向の方もいます。
もし、買主が自身でホームインスペクションを入れたいなら断る理由がないため実施してもらいましょう。
買主がホームインスペクションを実施するタイミングは、買付証明書後〜売買契約締結前の間に入れることが多いです。

5:ホームインスペクションの間違った解釈

中古住宅の見えない劣化部分を事前に知ることができるのは買主にとってメリットであり、売主側も事前に補修し売りやすい状態に整えることができるため、双方にとってもメリットになることが多いです。
しかし、ここでは注意点として3点紹介するので、こういったケースもあるということを理解しておくべきでしょう。

5−1:売主側のホームインスペクションを信頼されないことがある
売主側が実施したホームインスペクションの結果の信用性が疑われることがあります。
本来であれば、ホームインスペクションの結果は、どんな結果であろうと明かさなければいけません。
しかし、残念ながら良い結果のみを表示し、本来の結果を全て伝えないケースも中にはあります。
このような事実を買主は知り得ていることもあるため、ホームインスペクションを依頼する業者は、不動産会社と関係のない業者を選び、買主に安心してもらうことが必要です。

5−2:ホームインスペクション業者によって結果に違いがある
ホームインスペクション業者によって目視確認の範囲に差が生まれることも理解しておくべきです。
建物自体のインスペクションのみ実施する業者や、外構や塀も含めた全体のインスペクションを行う業者までその検査範囲はさまざまになります。
業者選定の際は、どこまでインスペクションを行ってもらえるのか、また費用面も含めて比較すると良いでしょう。

5−3:時間の余裕を持つ
ホームインスペクション業者は全国的にもまだまだ数が少なく、売り出す物件の場所によってはインスペクターの手配自体が困難になることもあり得ます。
日数の余裕がなく、数日以内にホームインスペクションの実施と結果を提出しなければいけない状態では、手配自体が難しいかもしれません。
このようなことが起きないよう、日数と時間の確保を予め押さえておきましょう。
インスペクション自体にかかる時間は、1時間〜3時間程度になり、報告書が仕上がるまでは1週間程必要になるケースがほとんどです。




≪ まとめ ≫

欧米諸国はホームインスペクションの先進国ともいえる程、中古住宅の市場取引や、大規模リノベーションをした物件の取引が積極的に行われています。
日本でもリノベーション物件数も多くなり、既存住宅に適切な手を加えながら、長く住み続けられる家を購入する方向へ転換しつつあります。
しかし、築年数が経過した中古住宅には、外構だけではなく建物内部の構造を把握した上で買主と取引することが必要であり、その劣化部分は売主がきちんと確認するべき内容です。
ホームインスペクションを実施することで、売主買主双方が安心し取引ができるため、中古住宅の売却を検討する際は、積極的に行うことをおすすめします。
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